江戸切子を購入する際に、必ずと言っていいほど出てくる名前が「薩摩切子」です。
ここでは「薩摩切子」と「江戸切子」の決定的な違いについて、ご説明して行きます。
江戸切子は、日常の生活中で、気兼ねなく手軽に使用でき、飽きのこないようなデザインと実用性が追求されてきました。
江戸切子は、江戸時代の夏などの風物詩を語る上では、かかせないアイテム(食器)として、
庶民に親しまれながら、今の現代まで受け継がれてきました。
一方、薩摩切子は、庶民に親しまれるような実用性ではなく、デザイン・装飾美など、
見た者の心を誘惑し惚れさせてしまうほどの美術工芸品としての価値を追求されて制作されてきました。
これは、薩摩切子の作られた目的が、当時の日本を外国から守るため、
日本を近代化させ、軍備を増強するなどで、多額の資金を得る目的で制作されてきたからです。
当時の薩摩切子の主な用途は、海外の列強国との交易品として用いられたり・大名や公家・将軍家への献上品として利用されてきました。
薩摩切子と江戸切子、まず決定的に違うのが値段です。
同じ切子グラスでも、薩摩切子のグラス値段は江戸切子のグラスの2倍はします。
これは、薩摩切子が、九州・薩摩藩の島津家の流れを持つ「島津興業」という会社を中心に、現在、ごく1部の会社でしか制作されていないので価格競争がないためと言えます。
さらに現在、流通している薩摩切子は江戸時代に作られていたものを、再現して制作されています。
そのため、単なる食器ではなく、美術工芸品としての特徴が強いものとなっているからと言えます。
薩摩切子と江戸切子では、デザインや技法が違います。
薩摩切子には、「ボカシ」という技法が存在します。
これは、カットするときにカットを縦から入れるのではなく、寝かせながら緩やかにカットすることで、
光がガラスを通った時に、幻想的な風合いが出ます。
カットが細かいのも、薩摩切子の特徴です。
一方、江戸切子の魅力は、大胆で豊富なカットデザインになります。
庶民を飽きさせない、庶民のアイデアを取り入れ、今日まで江戸っ子庶民に親しまれながら育ってきた江戸切子。
その大胆で斬新なカットによるデザインは、歴史を感じさせるものがあります。
薩摩切子と江戸切子では、使用する用途が違ってきます。
要約してまうと、薩摩切子が「美」なら江戸切子は「技」といえます。
使用目的を考えれば、江戸切子が「実用的」なら、薩摩切子は「インテリア」になります。
「日常で使うのか?」
「贈答品として誰かにプレゼントするのか?」
これが両者を選ぶ上での大きな違いと言えます。