よく、薩摩切子と比較されることの多い江戸切子ですが、その特徴や魅力など、現在に至っては製法や技法も薩摩切子も江戸切子もそんなに違いはありません。
これは江戸時代の末期に薩摩藩が英国(イギリス)と戦争を行った際、
薩摩切子の工場が燃え尽き、そのまま途絶えてしまい、生き残った薩摩切子の職人たちが、大阪や江戸に流れ着いたためです。
したがって、今日の江戸切子の製法や技法は薩摩で生き残った薩摩切子の職人たちから、継承されたものが数多く取り入れられています。
しかし、取り入れられたといっても、江戸っ子のクラフトマンシップは根付いたままで、現在も変わらず、カットデザインの豊富さは年々、増え続けています。
そして、江戸切子の最大の特徴は、このカットデザインの豊富さにあります。
これは、粋な江戸っ子の気質もあり、常に庶民の要求に答えてきたクラフトマンシップに根付いたものです。
江戸切子には、飽きのこない豊富なデザインとして基本的な型があります。
ここでは、その型をご紹介したいと思います。
☝魚子(ななこ) ☝六角籠目(ろっかくかごめ)
魚のウロコ模様が由来。 時代劇などで出てくる 「竹 かご」の網目が由来。
☝星(ほし) ☝麻の葉(あさのは)
空に点在する「星」に由来。 麻の葉模様が由来。
☝七宝(しっぽう) ☝八角籠目(はっかくかごめ)
古来から伝わる伝統な模様。 六角籠目と同じく、竹かご の網目が由来。
☝矢来(やらい) ☝菊つなぎ(きくつなぎ)
天から来る「矢の雨」の 点在する模様が菊の花に似様相が由来。 ていることに由来。
これらは、あくまで伝統的な基本的な型になります。
現在の江戸切子のデザインは、このような型にハマらない、多種多彩なものが日々、作られています。
そして、今や江戸切子は現代アートの1つとも言えます。
これは、現代までにも脈々と受け継がれた江戸っ子のクラフトマンシップの賜物といえます。
江戸切子の真の伝承とは、目に見える器だけにあらず、目に目ない江戸っ子の心意気こそが、
江戸切子の先人たちが、現代に伝えたかった本当の製法であると言えるのではないでしょうか。